2017年7月30日日曜日

「過労デフレ」時代の処方箋―「人権の経済システムへ」要約

この文章は、エキタス京都からリリースされた私の論考『人権の経済システムへ―サビ残ゼロ・最賃アップ・消費税3%が開く新しい社会』の要約です。


本論の目的は、生命と人権に立脚した、全く新しい経済政策を提案することである。労働者を犠牲にする経済から、誰もが人間らしく生きられる経済へと転換することが、労働者だけではなく日本経済をも救うということを示したい。

日本社会は過去20年間にわたって、「経済のため」という名目で、多大な犠牲を労働者に強いてきた。正社員の過剰労働、非正規雇用の拡大、消費税増税、増大する社会保障負担などである。
特にサービス残業は深刻で、いまや正社員の約半分に浸透し、その被害総額は年間約27兆円にも及ぶ。にも拘わらず、日本経済は先進国の中で唯一衰退し続けている。

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「働いているのに経済が回らない」。それが働く人の素直な実感だろう。そして昨今、「日本人の働き方が非生産的だからだ」という考えが浸透しつつある。だが本当は、「働きすぎだから経済が回らない」、これが正しい因果関係である。

過労デフレ

97年の消費税増税以後、リストラによって失業者が増え、残された正社員に過剰な労働負担が押し付けられた。サービス残業が失業者を産み、賃金がカットされ、給与支給総額が下がった。個人消費が減少したために、企業の業績が悪化して、さらに人件費が削減される悪循環が続いた。
小泉構造改革は、この失業者層を非正規雇用へと転換し、失業率を大幅に下げた。だが、これが正社員と非正規雇用のダンピング競争の始まりだった。正社員が減らされ非正規雇用が増え、残った正社員は、給料は増えないのに残業時間はさらに長くなっていった。働けども働けども、消費者は生活必需品すら買えなくなり、商品価格は下がり、労働生産性が低下した。この「過労デフレ」スパイラルが日本経済衰退の原因である。

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日本経済の現状に対して、安倍政権は、「残業代ゼロ法案」などさらなる労働強化で経済成長を目論んでいる。民進党は、増税によって将来不安を除き、経済成長は諦めろと主張する。一見正反対に見える両政策だが、共通しているのは、過去20年間繰り返してきた、国や経済のために国民に犠牲を強いる姿勢である。どちらの道を歩んでも、過労デフレを加速させ、日本経済を崩壊させる。

サービス残業がさらなるサービス残業と非正規雇用を産み、ブラック企業が日本経済をブラック化する悪魔の循環を止めること、それが日本経済を再生させるただ1つの方法である。必要なのは「サービス残業全廃」、「最低賃金アップ」、「消費税減税」、このワンセットの政策パッケージである。
消費税減税によって企業体力をつけ、サビ残全廃と最賃アップによって給与を底上げする。ブラック企業が市場から撤退し、その不当な利益が生活者とホワイト企業へと還元される。そうすれば、労働環境が正常化し、経済は自律回復の道をたどる。死ぬまで働かされる「犠牲の経済」から、「人権の経済」への転換が、私たちの生活だけではなく、日本経済と社会をも救う。


私の論考に興味を持たれた方は、ぜひ本論をご参照ください。「過労デフレ」のメカニズムをデータと理論から実証しています。原稿用紙換算で50枚、A4で20ページほどの内容ですが、noteで100円で購入できます。収益の半分は、エキタス京都へのカンパになります。また、別途カンパもできます。

https://note.mu/aequitaskyoto/n/n9127c3108660

よくわからないけど共感する、という方も、ぜひ拡散いただければと存じます。日本の労働環境と経済システムを変えていくプロジェクトに、ぜひご参加ください。

※この論考は、エキタスおよびエキタス京都の公式見解ではありません。文章の内容は私ishtaristに責任があります。